宗議会報告
宗議会議員 今居哲治
2019年5月27日から6月12日までの17日間、第67回真宗大谷派宗議会(常会)が東本願寺宗務所で開かれました。一年遅れの決算と新年度(7月から)の予算を中心に論議が交わされました。
「2023(令和四)年、親鸞聖人生誕850年・立教開宗800年慶讃法要」総計画(案)が提案されました。大切なこの案に対する私の所見を申し上げます。
親鸞聖人は、平安時代の末の1173(承安4)年に京都の日野の里で、お生まれになりました。幼名を松若丸と呼ばれたと伝えられています。4歳で父を、8 歳で母を亡くしたそうです。
そのような中で、9歳の時伯父の日野範綱卿に連れられ、東山の青蓮院の慈円僧正によって受戒得度されました。それから20年、比叡山延暦寺での命がけの修学、修業でも迷いを超えられない事を直視し、29歳の時、自らの歩む道求めて、吉水(東山の大谷)の法然房源空上人を尋ねました。そこで、自力聖道の道を捨て、阿弥陀如来の本願を信じ、他力念佛の道に帰依されました。そ
して、吉水の念仏集団に入り、僧俗同座(阿弥陀如来の働き・救いは僧侶も俗人も平等)の生活を過ごし、信心を血肉として身につけていきました。
しかしながら、朝廷は、1207(承元元)年、後鳥羽上皇の名で専修念佛禁止・教団解散の命令を出し、75歳の法然上人は四国に、35歳の親鸞聖人は藤井善信の名前で越後に流されます(承元の法難)
1211(建暦元)年の真冬、法然上人の訃報が届けられますが。京都へ帰ることをやめ、すべての人々の救済があって、自分の救いもあると言う確信に従い、当時の日本の朝廷・幕府の支配の及ぶ最北端の地・北関東へ赴かれます。関東ローム層の火山灰地で、苦闘する開拓農民。文字をも知らぬ田舎の人々と生活を共にされ、僧俗同座(全く平等の、信頼と尊敬を基本とする新しい人間関係)の暮らしを実現して、南無阿弥陀仏―本願念仏の教えに基づく生活を確立されたのです。
この様な親鸞聖人のあゆみを受けて、今、私たちの生活をどう創り出していくのかを明らかにすることこそ「生誕850年・立教開宗800年」を勝縁とするということになるのだと思います。
今居哲治哲治議員の一般質問要旨です
宗議会議員 今居哲治
「教区改編によって、一人の門徒の誕生はあるのか?」
● 教化活動と行政事務の分離が必要では。● 新教区の円滑な運営と、教化活動の空洞化を引きおこさないために=教化活動の場を「改編された組」のみとせず、必要なエリアでの事業の取り組みを= |
我が教団の宗祖親鸞聖人は、当時幕府・朝廷の支配の及ぶ北辺の鄙の地であった北関東の開拓地、関東ローム層の火山灰地で苦闘する農民達と共に、念仏を光として、厳しい生活を切り拓いていかれた。地震・津波・疫病・冷害・飢饉と、次々と襲いかかってくる困難に向き合い、生き抜く中で、文字をも知らぬ、田舎の人々と、御同朋・御同行の全く新しい水平の人間関係の集団を、実現していった。その宗祖親鸞聖人の生誕850年、立教開宗800年を迎えようとしている現在、全国の3地域で「新教区発足に向けて」準備の努力が、関係者各位によって、鋭意積み重ねられている。それについては、深甚の敬意を表す。
ところが、その活動が、今様々な困難な状況に遭遇している。九州教区においては、新教区への移行時期2年間をはじめ、初期における現5教区間の教区費の格差等、財政問題の不均衡、教区負担の増加の問題等の諸問題を抱えたままの移行となる。
そこで第一に、新教区への財政支援の規模と項目及びその期間をお示しいただきたい。
元より浄土真宗においては、教えは、日常生活の場で、生きる日々の現実の中で試され、わが身に受け取られてきました。その意味で、毎月の命日のお参りの家庭での会話。地域、寺での聞法会はじめ、様々な活動を通して「地域の聞法道場としての寺の存在意義」は、浄土真宗の教えに則って活動が形作られてきたと考える。このような事を踏まえるならば、「寺院活性化を支援」し、組を中心とした「集まる教化活動」に力点を置くことは、理に適った方向性である。
ところが、改編されることで、門徒数一万戸余りの組が生まれ、そこでは様々な活動が人的、財的にも十分に果たされるものの、存続そのものが危ぶまれる組もあり、大きな組間の格差が生じることとなる。
組改編については、新教区で解決すべき問題ではあるが、当局には、改編が改悪とならないように、丁寧なご指導をなされることを求める。
これまで門徒戸数の少ない組や、寺院数の少ない組は「現教区」の事業に参加することで、善き人に出会えたり、活動の様子や経験を交流する事ができた。また、今まででも「現教区」坊守会事業には、組内坊守会が活発な組からの参加者は少なく、代表参加的な参加であったが、組の規模が小さく坊守会の活動が困難な人達が、現教区坊守会へ参加し、悩みを相談、経験の交流ができ、エネルギーを貰って、各組各寺での日々を深めている。女性差別の現実が、存在する日常の生活を踏まえて、婦人会や坊守会など、女性の活動の場の保障を如何にするかは、当事者からの意見の聞き取りと、充分な配慮が必要と考える。また、高齢者中心の、門徒会や同朋の会推進員の活動の場の
保障についても、同様の配慮が不可欠である。そのためにも、エリア事業の存続の必要性を感じている。
新教区教化体制の各機関の人員構成については、「各エリアから〇名」とあり、現教区廃止、2 年間の過渡的措置を経て「基本的に組織は設置せず・・・「組」複数「組」による教化事業を実施する」となっている。
エリアの代表は。
現在は現教区での教化活動や会議等を通して、交流する事で人となりに出会うことが出来ているが、2022 年以後、時間を経るにしたがって、近隣の「組」の人と取り組みは、知りえても、エリア全体を網羅する、その識見・知見を持ちえず、何をもって「エリアの代表・エリアから選ばれた」とするのか「エリアから誰を代表とするのか」という問題に、誰もが突き当たるであろうと考える。僧侶・坊守はもちろん、特に任期が短い門徒会・同朋の会推進員、婦人会の方々はとてもお困りになると考える。
宗政報告会(2019.5.27於 浄喜寺)
エリアの教化事業は。
九州教区全体での教化事業・会議への参加は、参加できる条件を持っている人が極めて限定的固定的になることが予想されます。ある程度のエリア教化事業・運営機能を残存し、九州教区教化本部での教化事業・会議参加者数を減ずる方策等を検討するべきだと思う。
聞き及ぶところでは、東北の「奥羽・山形・仙台教区」では「必要なエリア事業は行う。新教化委員会の中にエリア事業を担当する部署を設置する」事が合意の前提として確認されているとのこと。それはまた、「教区の改編が教化の衰退―教団の解体」とならぬ為には、必然的方針だと考える。
新教区準備委員会には、エリアに関わるこれらの懸念に十分な配慮と手当てがなされるように、当局からのご指導を期待するが如何か。
私達の教団で最も配慮するべきは、経済的効率主義ではなく、御同朋・御同行の聞法生活・サンガを、如何に実現させるかにあるのではないか。
内局答弁要約
(担当参務)
●九州5教区の改編においては、尽力を賜わっている。
●改編にあたっては、各教区からの声を大切にしている。
●各教区の一律割当は、困難である。当面の間、「割当委員会」で論議していただくが、中央からの指示ではなく、地方の声を聞いて進めてゆくこととしている。
●組の改編については、従来の「組」の事業を推進してほしいと考えている。各組によって取り組みにはバラつきがあるが各教区の議論によって進めてほしい。
●当面3年間は、「実行委員会」を設置し、各エリアでの事業の展開を視野に入れて、各教区で工夫されたい。実際、「坊守会」等では議論がなされている。エリアの教化事業の必要性を本山が認める、認めない、ではない。
(詳細は、後日発行される「真宗」をご覧下さい。)
同僚議員の一般質問(抜粋)
同朋社会をめざす会 新潟三条教区選出 田澤一明議員
最初の慶讃法要案である「内局原案」では、教学教化の方針の一項目に「差別問題への取り組み」が掲げられ、次のように記されている。
・「是栴陀羅」の課題への取り組みをはじめ、あらゆる差別問題への取り組みと聖教との関係を明らかにすべく、慶讃法要に向けて設置する聖教編纂室における聖教編纂の歩みと軌を一にする。
ここには三つの重要な論点が示されている。
①「是栴陀羅」の課題は、慶讃法要における教学教化の取り組みの一つである。
②「是栴陀羅」の問題のみならず、他の差別問題にも同時に取り組むべきである。
③この差別の課題は、慶讃法要の記念事業である聖教編纂と密接に関わっている。
これはきわめて当然な意見であると考える。
この『内局原案』を議論の出発点とした宗務審議会の『答申』では、是栴陀羅の課題に加えて性差別の課題にも言及し、「あらゆる差別問題への取り組みと、聖教との関係をも明らかにすべく、聖教編纂室における歩みを進める」と、上記の三つの論点を踏襲している。
また、その『答申』を受けて作成され、内局巡回時に示されたリーフレットでは、「すべての人びとに向けて教えの発信を」という重点項目の中に、「是栴陀羅の課題共有・さまざまな差別問題への取り組み」を掲げています。③については別項目となっているため一歩後退した感はあるにせよ、①と②については継続して重要課題として明記している。
ところが、こうした経緯を踏まえて作成されたはずの、最終計画案とも言うべき『事業概要』において、聖教編纂との関わりのみならず、「是栴陀羅」の問題にも他の差別の問題にも一言も触れられていない。これまでの議論の積み重ねを無視して、すべての論点が白紙に戻された。これは一体どうしたことなのか。
総長は演説で、「部落差別問題についての取り組み」についても確かに述べられている。しかしそれは、時間の限られた慶讃事業としてではない。
思えばこの課題は、水平社創立当時から検討を求められてきた課題である。くしくも、慶讃法要前年の2022年は、水平社創立100周年にあたる。この間我が教団は、この深刻な問いかけに対し、明確な応答をすることができていない。
「なぜ放置しえたのか」―それは端的に言って、「痛みを感じる」ことに無知であったか、知っていてなおその声を真摯に受け止めることがなかったからだと言える。
当局はこれまでこうした言い方で課題を放置してきた。その典型が「見真額」の課題である。これ以上「課題の共有」という名の不作為、「学習の継続」という名の先送りを続けてはならない。
(全文は、「同朋社会をめざす会」のホームページをご覧下さい。)
本会議を前に勉強会(於 会派控室)
請願を審議せず
議会制民主主義を踏みにじる暴挙
今宗会に、請願者高田教区の藤島直氏、紹介議員金子光洋議員(高田教区選出、無所属)とする請願「立教開宗の意義を明らかにするため、御影堂から見真額を下げることを求める」が提出されたが、請願委員会は、これを審議しないという暴挙に出た。これは、議会制民主主義の本旨を踏みにじる重大な違背行為であり、議会の審議義務を放棄するもので、到底看過できない。
もともと「請願」なるものは、憲法第16条に規定されており、何人にも保障されている権利である。又、請願法第5条には、「請願を受けた機関は誠実にそれを処理する義務を負う」となっており、要件が整っておれば、請願者の意思を尊重し、関係機関は必ず審議しなければならないものである。
今回の請願は、形式上も請願内容も不備はなく、議長は正式に受理しているにもかかわらず、請願委員会がこれを審議しないのは、言語道断と言わざるを得ない。
審議をしない理由は、「同様の質問が宗会の一般質問で出されており、この件に関しては、すでに宗務総長が答弁している」とのことのようであるが、「一般質問」と「請願」の取り違いもはなはだしい。前者は、「議員が宗務総長もしくは内局に対して質問する」ものであり、後者は、紹介議員があれば、宗門に属するものは誰でも、議会に対して、それこそ「請願」することができる、普遍の権利である。
今回の暴挙は、宗会史上永遠に汚点を残すものと言わざるを得ず、我々議員としては、今後も正常な議会運営を声を大にしていかなければならないと痛感している。
ハンセン病療養所「星塚敬愛園」を訪問
ハンセン病問題懇談会第5連絡会 *
6月17ー18日に鹿児島県鹿屋市のハンセン病療養所ー星塚敬愛園 に聞き取り調査で伺いました。鹿児島中央駅に11:00集合し、鴨池港からフェリーで垂水港へつき14:00頃星塚敬愛園に到着しました。園内施設を見学した後、お話を戴きました。
病気が回復されている元患者の上野正子さんが、故郷のサーターアンダギーを山盛り作って歓迎して下さいました。穏やかな語り口ながら、深く重いお話を、聞かせていただきました。
二度目の訪問になりますが、紫陽花がそこここに咲いています。ここに住む人たちの心の姿が、この景色を形作っているのでしょう。苛酷な隔離政策で、自給自足の園生活 が、麻痺する手足の酷使を強いて、切断を招く。渇いた、光の見えない日々であるからこそ、花を、緑を、木々をいとおしむ。一人ひとりを大切にすることが、一日一日を越えていく原資だったのでしょう。
*「ハンセン病問題懇談会第5連絡会」とは、九州5教区に沖縄を加えた各地区の代表者で組織されています。(今居議員は日豊教区代表の委員です。) |
ハンセン病家族差別認定さる
ハンセン病の元患者の家族561人(20~90歳代)が、患者への隔離政策で家族も差別や偏見を受けたとして、国に1人当たり550万円の損害賠償などを求めた「家族訴訟」の判決が6月28日、熊本地裁で出されました。
地裁は、隔離政策が家族への差別被害を生み、憲法が保障する人格権が侵害されたと認定。原告541人に33万円~143万円、総額3億7675万円を支払うよう命じました。判決は、隔離政策による差別被害の実情として、①就学拒否や村八分 ②結婚差別 ③友好関係など多岐にわたる人生の選択肢の制限 などを挙げ、「個人の尊厳にかかわる人生被害であり、不利益は重大」と指摘。
あわせて、厚労相と文科相も、96年の「らい予防法」廃止時点で、家族への差別被害を認識していたが、啓発や教育が不十分だったと指摘。また、同法改正運動などから65年には違憲性は明白だったとし、「長期にわたって立法怠った」と国の過失も認めました。
(2019・6・29付 読売新聞から引用)
第11回 真宗大谷派
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1日目 9月13日(金)13:00~17:00 開会式ー基調講演
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いつの時代でも、親鸞聖人の教えに随順し、弥陀の本願を仰ぎ、その中核にある「個人の尊厳」を認める人間のつながりを求めて歩んでゆきたいと考えます。
「十方の如来は 衆生を一子のごとくに憐念す」
(「2019法語カレンダー・5月」より)
今居議員 会派の幹事長に就任
今常会終了後、同朋社会をめざす会では、会派会議を開き、今居議員を幹事長に選任しました。当選1期目のしかもまだ任期も半分残す新人議員が選任されるのは、異例の抜擢です。彼の人間性、研究熱心さ、そして会の友和と団結に前向きに取り組む姿勢と熱情が評価された証左だといえます。
「小さな会ですが、少数意見だからこそ大切にされなければ、組織は専断、私物化される危険をはらんでいます。微力ですが、聖人の呼びかけに常に頷き、開かれた教団を同僚議員といっしょに目指したい。」と今居議員。 |
宗議会傍聴記
機会をいただいて、初めて宗議会を傍聴した。筆者は住職になる前は公務員をしており、住む自治体の議会事務局に在籍してことがあり、興味をもって臨んだ。どこの議場も、立法機関と行政機関の真剣なる議論の場であり、ピリピリそして緊張感のあるいわば戦いの場であるが、宗議会の議場もこれに違わず、一種独特 の雰囲気を感じた。開会前には、正面に名号が飾られたいわば簡易内仏が安置され、全員で真宗宗歌を斉唱。これが終わると内仏に代わり正面は抱き牡丹紋となり、いよいよ開会。議長の開会宣言(招集日からの流れでは、「再開宣言」。)今居議員は、本日の6番目の登壇。筆者としては、的確に質問項目をまとめ、問い糺したいことは十分に伝わったと思うが、内局の答弁はいささか紋切り型だったように思った。短い時間ではあったが、質問議員がそれぞれどんな課題と問題点を抱え、又、宗務総長はじめ内局の担当参務の方がそれにどう対処しようとしているのかは、自分なりに理解でき、有意義な傍聴であった。ただ、重要なのは、「これで、宗会も終わった。やれやれ・・」(無責任な言い方かもしれないが。)で終わることなく、内局は答弁した施策を今後どう具現化してゆくのか、そして、それを議員がちゃんとチェック、検証してゆくことだと一宗門人として強く感じた。 (今居哲治後援会 MO) |
知っておきたい宗会のしくみ
二院制
宗会も国会と同じように二院制を敷いています。
●宗議会 (定数65人。有教師)
・常会 17日以内。 ・臨時会 3日以内
●参議会 (定数65人。門徒代表)
・常会 7日以内。 ・臨時会 3日以内
常設委員会は5委員会
◆ 予算委員会 定数 12人
◆ 決算委員会 8人
◆ 請願委員会 8人
◆ 運営委員会 8人
◆ 懲罰委員会 8人
※特別委員会
特例の案件を調査、審議するために設置。(今常会では、「慶讃事業特別委員会」(委員12人)が設置されました。
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編集後記「良哲通信第3号」をお届けします。 観測史上最も遅くなった今年の入梅。本号がお手元に届くころは梅雨真っ只中でしょうか。近隣の自治体では、水不足で飲料水に制限がでています。普段はごくごく当たり前としか思っていないのが私たちですが、こういう状況になると有り難さを痛感します。 今居議員は、早いもので、就任1期目の半分が過ぎようとしています。「教区の声を宗門に!」と頑張っていますが、なかなか届かないことにじれったさを感じているようです。これに立ち向かうには、もちろん本人の学び、研鑽が不可欠ですが、みなさんの叱咤激励も大事です。今後ともご教導をお願い申しあげます。 向暑の砌、ますますのご自愛を念じております。 |
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■ 発 行 : 今居哲治後援会
■ 編 集 : 「良哲通信」編纂委員会
■ 事務局: 〒824-0018 福岡県行橋市今井1802番地 淨喜寺内(☎0930-23-0354)