あっという間に4年間が経ちました!
見えてきた宗議会の多くの問題点と課題
4年前、本山の強硬なる教区改編と宗務運営に疑問を抱いて、立候補を決意し、皆さん
方の熱心なる御支持とご支援をいただき、宗議会に一歩を踏み出しました。
その中で、現在真宗大谷派教団の運営にかかわる問題点、特に宗議会の機構的な欠陥が様々な点で明らかになりました。
それは、宗議会制度そのものが明治憲法下の議会制度とその運営方法を色濃く残している時代錯誤的なものでした。
その最たるものが、
- まず、行政権への権力の過剰集中
- 行政等の「宗憲違反」を公正に裁く機関 ( 宗憲裁判所) の欠落 。
- 少数意見の軽視と切り捨て。( 議席数による質問時間の配分等)
- 議席多数派重視の正副議長、各委員会委員長等の占有。
- 誓願権の取り扱いの誤謬。( 紹介議員がいるのに、委員会で却下等)です。
私は、ことあるたびに声をあげましたが、「宗議会と一般議会とは違う。」「これが慣習だ!」などという理屈にならない錯誤的言辞で言い逃れてばかりで、真剣に課題に取り組む、真摯にこれに応えようとしない内向きの体質にぶつからざるを得ない議員活動の日々でした。このような閉鎖的体質からは、現代社会から要請されている「様々な苦悩している人々に応える開かれた教団」とは程遠い姿をまざまざと眼に見せつけられました。
今こそ、「同朋の僧伽」をめざして、宗祖の「いし、かわら、つぶてのごとくなる我ら」の呼びかけに立ち返って行かねばならないと改めて思います。
「如来の御ちかいを、ふたごころなく信樂すれば、摂取のひかりのなかにおさめまいらせて、かならず大涅槃のさとりをひらかしめたもうは、すなわち、りょうし・あき人などは、いし・かわら・つぶてなんどを、よくこがねとなさしめんがごとしとたとえたまえるなり」
(聖人「唯信鈔文意」)
今議会に於いて「内局不信任決議案」が提出され、同僚の田澤議員が賛成討論を行い、内局不信任の根拠、経緯が細かく述べられています。
いかに今の内局が独断、専横であるかが読み取れます。
みなさんも実態を注視していただきたく、掲載します。
内局不信任決議案」賛成討論
「同朋社会をめざす会」 田 澤 一 明
昨年の宗会(常会)は、新型コロナウイルス感染症の拡大という状況下で、宗議会は3日間、参議会は2日間の日程で開催され、当局提案の案件は宗参両議会においてすべて可決され、6月22日に閉会された。
ところが、その後時を置かずに、7月1日付で総長から議員宛に「総発第147号」という一枚の文書が届いた。「2020年度の経常費御依頼額については、さらに5億円を減額し、総額41億8,834万円(前年度比79.73%)で御依頼することを、内局の責任において決断」したという内容で、これは全く信じがたい驚くべきことだった。
昨年の常会は、総長演説・財務長演説・提出予定議案は、事前に書面で送付、質問・答弁
も書面によって行われ、口頭での審議もなされない異例なものだった。議会のあり方については疑義があるにしても、そこで語られたことの重大さは従来と全く変わらないものである。
総長が宗会においてされる「総長演説」は、所信と宗務執行方針の表明であり、「財務長演説」はそれに基づく財務の基本方針の表明だ。そしてすべての議案は、それに基づいて提出されるもの。それは宗門にとって極めて重いものであり、それゆえ宗会の質問・議決を経た後は、すべての宗門人によって尊重されるべきものとして、公表されてもいる。
特に昨年の常会は、コロナ禍という厳しい状況にあって、宗派がどのような対応をするのかが大きな焦点だった。経常費御依頼額をどのくらいにすべきかが大きな関心事だった。
そこで表明されたことが、「前年度御依頼総額の約10%に当たる5億円の減額」であり、この減額措置によって生じる歳入不足の補填のために、「宗務役員の人件費の一部削減」・「更なる歳出の抑制・削減」・「平衡資金から2億7,000万円の融通」を行うという提案であった。
これは歳入に重大な影響を及ぼす財政措置であり、だからこそ思い切った補填策も併せて提言されたものと思われる。
これらはいずれもこの年の宗務執行方針や予算の根幹に関わるばかりではなく、今後の宗政にも大きな影響を与える重要事案である。それゆえ多くの意見・質問も寄せられ、それに対する答弁も重ねられた。無論賛否はあるにせよ、こうした議会における審議を経て議決されたものであった。
それがわずか一週間後に覆った。万が一それが許されるとすれば、誰もが認めざるを得ないような、決定時と異なる環境の激変があった場合に限定される。そして、たとえそうした場合でも、緊急に参与会・常務会が招集されその説明と了解が必須である。しかしこの間、周知のごとくそうした環境の激変はなく、一切の説明もないまま御依頼額のさらなる5億円の減額が提示された。
これは議会の議決はおろか何らの説明もなされないまま行われた、明らかな内局の独断である。したがって、宗門の財政のあり方を規定した宗憲第94条「本派の財政は、両議会の議決に基づいて、これを処理しなければならない」、ならびに宗憲第95条「内局は、毎年会計年度の予算を作成し、宗会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」に対する明白な違反行為である。
のみならず、この内局の独断的行為は、先に述べた演説と、それに依拠する提出した予算案を自らが否定するものだった。
繰り返しになるが、演説において示された5億円の減額は重大な財政措置であり、すべての予算の緊縮を強いるもので、それゆえその根拠を示すよう求める質問が出された。それに対する答弁は、例えば以下のごとくである。
「全寺院・門徒への影響が甚大であることを受けとめ、経常費御依頼額を5億円減額するという内局判断に至ったものであります。寺院・門徒の窮状に対する対応策としての規模感と大規模広域災害など今後の緊急事態への備えとして必ず確保しなければならない平衡資金の総量を熟慮し、さらに既に大幅な予算削減を実行したうえにコロナ対策を盛り込んだ予算として編成することのできる収支の限界値を算出した結果が、このたびの5億円であります。」(『第69回宗議会(常会)議事録』p76)
そして別の答弁でも、この5億円減額は「予算編成上の収支の限界値として算出」(同書付録p30)したものであり、「実効性と即効性のあるコロナ禍対策として、今考えられる最良の手立てとして判断したもの」(同書p216)と述べられている。
議会は最終的にこの根拠を信頼し、それに基づく予算案を可決した。
しかし内局は常会の直後にさらなる5億円の減額を表明することによって、常会でのこの説明が虚偽の答弁であることを自ら明かした。5億円の減額の根拠が虚偽であるなら、その5億円の減額に基づく予算案も虚偽であり、議決された予算もまた虚偽であることを免れない。つまり先の議会全体が、虚偽のもとに積み上げられた虚構であった。それは、議会軽視とか議会無視とかいうより、議会を愚弄するものだとさえ言える。
しかもそのことに対する謝罪はおろか、訂正も説明さえも未だなされてはいない。それに対して議会が何も言わずにいるということは、それを黙認するということ。すなわち、今年もそしてこれからも同じことが繰り返される可能性があるということだ。
つまり、先ほど演説で表明された御依頼額を歳入の大きな要素とする予算案の採決があったが、この後に御依頼額が内局の独断で変更されうるということ。我々議員は、何を信頼し何を根拠に賛否を表明すればいいのか。そのような状態で議会の責任、議員としての責任を果たすことができないことは明らかである。
この「さらなる5億円減額問題」に対し、当然のごとく宗参両議会をはじめ各方面から多くの疑義が発せられた。そしてこの問題を看過できないということで、宗議会の正副議長が総長に申し入れをし、ついには宗参の正副議長4 名の連名による「提言書」が総長に対して提出されるという異例の事態にまで発展した。これはこうした疑義が発せられる状況を憂慮し、内局の姿勢を正し、宗会と内局の信頼関係を回復せんことを意図したものであったと思われる。
しかしながら、今に至るまで疑義が晴れない状況であることは、今常会における藤内議員の代表質問、大橋議員の一般質問を聞いても、あるいはこの度提出された『2020年度 参議会宗政調査会報告書』における「制度機構専門委員会報告」を見ても、さらには昨日行われた加藤議員の参議会代表質問においても明らかである。したがって信頼関係は深く毀損されたままだ。
その主たる要因は、内局の説明の内容とその姿勢にあると思われる。
説明について要約すれば以下の三点に集約される。
① 予算額=御依頼額ではない。
② 御依頼額は内局の専権事項である。
③ その根拠は、宗憲第44条「宗務執行の権限は、内局に属する」である。
①の「予算額=御依頼額ではない」については、額には確かに一致はしていない。そもそも「御依頼額」という項目が予算書にはなく、総長演説・財務長演説・予算概説等で示される。それはそのまま御依頼額が予算額と密接に関わっていることを示す。もし「予算額=御依頼額」ではなく、御依頼額は予算決定後に内局だけで決めうるのであれば、そもそもここに書く必要がない。
さらに内容については、たまたま昨年の参議会における甲斐議員の一般質問の内容に、経常費御依頼金に含められている内容を問うものがあった。それに対する答弁は以下のごとく。「毎年各教区に御依頼され、教区から各寺院に御依頼している『経常費』は、その納入方法として、相続講金・同朋会員志金・読経志・諸懇志・一部の願事礼金があり、いずれの形でお納めいただいても『経常費』として寺院への御依頼に充当されます。(」『真宗』2020年11月号p34)
ここに明らかなように、「相続講金・同朋会員志金・読経志・諸懇志・一部の願事礼金」が御依頼額の根拠であり、その予算項目の審議をすることが、すなわち御依頼額の審議になる。
総長は昨日の藤内議員の総括質問に対する答弁で、「真宗大谷派規則」の第21条「宗会は、次の各号に掲げる事項を議決する」という各号の中に「御依頼額」がないから、それは議会の議決によるものではなく内局の専権事項であることの根拠に挙げられていたようであるが、御依頼額はその内容が予算の中の項目に依拠していることにより、宗会の議決事項の(1)に掲げられている「予算」の中に「御依頼額」は含まれると思われる。
したがって、実際の数値として現れる予算額は御依頼額とは完全に一致しないまでも密接に依拠していると言うべきである。「予算額=御依頼額ではない」ということが、予算額と無関係に御依頼額を設定していいということではない。
もしそうであるならば、議会の予算審議は無意味であり、議会の存在意義はない。
②の「御依頼額は内局の専権事項である」ということについては、すでに①で述べたようにそれは議会の議決に基づかねばならず、内局の独断によって予算に関わる数値が大幅に変更されることは宗憲94条の違反に当たる。
そしてその法規上の根拠が③の宗憲44条であると内局は説明。確かに第44条には内局の宗務執行の権限が記されているが、その執行にあたっては、同時に第47条に宗会に対する連帯責任が明記されている。それは、内局の宗務執行の権限は議会での議決・承認の範囲においてのことであり、だからこそ執行にあたっては議会が連帯して責任を負うのだということである。逆に言えば、議会が議決・承認していないことを執行する権限は内局には付与されていないということ。したがって、この度の議会の議決に基づかない5 億円のさらなる減額は、執行権の乱用であり、ここでも宗憲違反にあたる。
現宗憲はその前文に、「この宗門の運営は、何人の専横専断をも許さず、あまねく同朋の公議公論に基づいて行う」と宗門運営の基本理念を掲げている。この前文が置かれた理由は、前の宗憲の条文解釈が徒に曲解され、そのことが宗門の異常事態を引き起こした大きな原因となったという反省によるもの。つまりこの前文を設けることによって、宗憲のすべての条文はこの前文の精神によって立てられているものであり、条文の解釈においては、すべてこの前文の精神に基づいて理解されねばならないということを示し、それによって恣意的な条文解釈を防ごうということである。
この宗憲の前文に照らしてみる時、この間の内局の行為、説明と姿勢が、著しくこの「同朋公議」の精神に反していることは明白である。
そもそもこの宗憲に示された同朋公議の精神を、最も尊重し順守すべき義務を負うのは内局です。大きな権限を有する総長・内局こそは、その精神に背いているかいないかに対して最も敏感であらねばならない。したがって、現状のような、内局に対する専横専断ではないかという疑義に対しては、謙虚に耳を傾けねばならない。
しかるに、そうした疑義に対して耳を傾けることなく、宗憲第44条を根拠に「内局の専権事項である」と繰り返す姿勢は、自らこの宗憲の精神を踏みにじるものであると言わざるを得ない。
今宗門は、「宗祖親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要」を目前にひかえ、新たな宗門のかたちを模索すべき時を迎えている。この大事な時期にこれ以上宗務執行の権限を託すわけにはいかない。
今年は、いわゆる「教団問題」の混乱と苦闘の果てに「現宗憲」が獲得されてちょうど40
年になる。それはまた問題の記憶が薄れ風化していくのに十分な年月でもある。加えて「専横専断」という傾向は、我々人間一人ひとりに抜きがたくある本質でもある。だからこそ我われは、その精神に繰り返し繰り返し立ち帰らねばならない。
今は内局に対する不信任議案であるが、その願うところは、先人たちが打ち立てた宗門の
基本精神をどう受け止め回復し、そしてそれを将来にどう手渡していくのかということである。
議員の皆様の自らの信念に立っての意思の表明をお願いして、賛成討論を終わります。
門徒代表の参議会でも、幹事長の加藤晴郎さん(岐阜高山教区選出)より宗務内局に次のような問題を厳しく提起している
質問要旨
【円滑な宗門運営に向けて】
●昨年の第67回参議会(常会)は全国に「緊急事態宣言」が出され、書面質疑に加え宗会の並行審議も止めて付託議案の委員会討論もなく、本会議で提出議案を議決し2日間の会期を終了した。厳しい宗門環境を反映して予算案は前年対比約5億円を減額編成し、総額80億7千1百万円で宗会議決を経て成立した。コロナ禍の思わぬ事態で、やむを得ない運営だったが、宗会における議会の役割が問われた。
しかし、閉会し1週間後の7月1日付で送達された宗務総長名の文書には、コロナ禍の負担軽減を目的に、内局の責任で「御依頼額をさらに5億円減額」実施するとの内容だった。驚いたのは、宗会本会議で承認した予算を宗務執行機関の内局が、何の前触れも説明も無く独断で5億円を減額する変更を表明したことだ。宗憲第94条(財政の処理)で宗会の役割、宗憲第95条(予算の議決)で内局の役割と両議会の縛りが明確に記述され、宗憲を逸脱した行為と言わざるを得ない。こうした行為を防止するため、宗会条例第44条では議会で議決した案件の修正の禁止が明確に示されて、コロナ禍で疲弊する寺院運営に配慮し取られた事とはいえ、日本国憲法の三権分立は真宗大谷派宗憲にも精神は遵守
され、「宗門の運営は、何人の専横専断をも許さず、あまねく同朋の公議公論に基づいて行う」と宗憲前文に謳われるように、現在まで偏らない宗務運営が行われてきたと理解している。
〇その後の宗調の際には、正当性をアピールする主張の中に「内局の専権事項」、「予算額=御依頼額ではない」「未曾有の非常事態に従来通りの手法では宗門を護持していく事は困難であると内局で判断した」、こうした説明内容に対し宗会議員から懸念が寄せられ、考え方や見解の相違とは少し異なる違和感を禁じ得ない。
申し上げるまでもなく議会と執行機関は「車の両輪」に例えられ、それぞれ権限・立場は明確に区分され尊重されると共に、バランスの良い関係が重要だ。この度の事態では、意思疎通不全すなわちコミュニケーション不足が原因に挙げられる。常会に重要な事柄の説明がない、考え方が分からない、聞く耳を持たない、質問内容に答えていない、この状況を払拭する事が必要と感じる。教法に通じる「伝える」という言葉の意味は大切だ。決して上から目線ではなく、謙虚な心でなければ人に「伝わらない」と教わってきた。
今後の風通しの良い参議会との関係性を含め、具体的な質問をさせていただきます。
- 議会運営は基より行財政改革は重要な論点と 考える。意思疎通不足を補うべく宗調等の機会や、随時意見交換の場が必要と思う。
- 御依頼額は昨年度まで10年以上53億円余りで変動が無く、この実態からも決定した御依頼金額は各教区の「教勢等の実情に照らして」双方で確認し、協議して決定されたもので、内局の専権事項で定めたとは考えられない。
- 議論される、「御依頼額」の対象の科目や総金額が予算書に明記されていない。願いの予算から実態予算への転換趣旨からも、記載すべきと考える。
- また、規則や条例に照らすと困難である、当初予算の財源不足に平衡資金を予め充当した予算案が恒例化し提出されている。その根拠と改善について説明を願う。
- 更なる5億円減額の影響により、宗派内の関係部門に一律予算カットが指示された事と推察し、宗門にとって大切な職員の心の健康やモチベーションの低下が心配だ。コロナ禍を含め、勤務環境変化や心と体の健康への影響を憂慮し、実態を報告ください。
「同朋社会をめざす会」同僚議員の質問
今回の常会では、同僚議員も質問にたちました。
以下、質問概要を掲載します。(一部抜粋。要旨のみ。)
代表質問 目指すべき社会とは
藤内 和光 議員(仙台教区選出)
①「 同朋社会」とは
行財政改革の内局案は内向き。
持続可能な寺院と宗門をどう構築するかに終始している。
これは、同朋会運動が、社会への開けを持たぬまま展開してきた証左である。
但馬弘宗務総長
貴賤や優劣を比較せず、どんな人にも互いに朋(とも)と見出すのが同朋社会。同朋社会を「呼吸圏」とする生き方を「同朋社会の顕現」の証しとして歩みたい。
② 解放運動推進本部の今後について
人権問題は、宗門が担う大きな課題の一つ。解放運動推進本部の解消は決して認められない。
但馬弘宗務総長
「人と生まれた意味を尋ねること」を阻害する課題に、仏弟子として対峙する覚悟が必要。改めて宗門の課題としたい。
③ 財政調整基金の新設について
2010年にウィルコム社債を1億円購入し、倒産などで3750万円の損出を出した。それから11年で資産運用の話が出ている。当時、議会の総意として運用しないことを決めた。改革案には金の一部は運用し、運用益を確保するとある。宗門の財産を危機に さらすことはやめてほしい。
但馬弘宗務総長
決して運用ありきではない。持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業への資金調達を目的としたSDGs債など、新たな金融商品が数多く存在している。宗派との親和性が高い事業への投資で、定期預金以上の収入を得ることができるかも知れない。まずは、財産管理審議会で議論を尽くしたい。
④ 5億円のさらなる減額について
昨年の宗会(常会)後に5億円を減額したことに対し、「内局の専権事項」という説明が行われたが、同朋公議を標榜する私たちに適切な言葉遣いか。宗憲第47 条「内局は、宗務行政について、宗会に対し連帯して責任を負う」に照らした見解を聞きたい。減額を補う手段として、特別な衣体の許状が出されたが、差別問題を宗門課題の中心の一つとする私たちにふさわしいか。
但馬弘宗務総長
宗憲第44条の「宗務執行の権限は、内局に属する。」をもって行った。但し、宗務執行の権限は、重い責任を伴うと受け止めている。その後の宗務執行において責任を果たすことも含め、「宗務執行の権限」を根拠としている。
藤内さんの代表質問の詳細は「同朋社会をめざす会」ホームページをご覧ください。
一般質問 障がい者問題とミャンマー軍事政権クーデターに対する宗門の取り組みを問う
杉浦 明道 議員 (岡崎教区選出)
◇ 障がい者雇用と障がい者差別問題について
厚生労働省が2021年1月に発表した集計結果によると、民間企業における雇用者数は、過去最大を更新した。しかしながら、法定雇用率を達成した企業の割合は、48.6%となっているし、今後も更なる引き上げが予想される。
そこで、宗派の雇用状況をお教え願う。また、雇用率は何%であり、法定雇用率を満たしていない場合の「障がい者雇用納付金」は、年間いくら納めているのか。
かかる状況を考えると、宗派の障がい者雇用はまだまだ十分とは思えず、今後どのように考えておられるのか。このことは、「同朋社会の顕現」を標榜する大谷派教団そのものが問われている問題であると思う。
次に、障がい者差別問題への宗派の取り組みについて伺う。一昨年の草野参務の答弁では、「障がいを持
たれる当事者の声を十分に伺いながら、環境を整備していくとともに、各地での学習会の開催などによる意識啓発の取り組みを今後も進めて参りたい」と答えられたが、その後、宗派内における障がい者差別問題に対する取り組みはどのように展開されているのか。宗派としてのこの取り組みは、慶讃法要における大事な課題の
一つでもあると思うがどう考えているのか。
◇ 真宗の国際化とミャンマー問題について
2月1日、ミャンマー軍によるクーデターがおき、6月5日時点で死者は少なくとも847人に及ぶ。また、今なお拘束されている人々は4,500人に及ぶという報告がなされており、多くのビルマ僧も拘束されている。
ミャンマーの国民の9割は仏教徒で、ビルマ僧は、「ブッダの子」として社会の尊敬を集めている。
このような状況下、3月15日には、全日本仏教会の理事長名で、ミャンマー国民の誰もが希求する、人権の尊重と命の尊厳が守られる、平和で民主的な社会が築かれることを強く望むという内容の「ミャンマーの国内情勢を憂う」という談話が出された。また、4月7日には、日本キリスト教協議会(NCC)が、ミャンマー軍に対する市民の非暴力による不服従抵抗運動を支持する声明を発表している。
さらに、6月1日には日本の文化人やジャーナリスト、学者、弁護士、宗教者らが賛同し、緊急声明「ミャンマーの人びとに寄りそう」を発表している。ところで、大谷教団」は現在まで声明など何らアクションを起こしていない。真宗の国際化の観点から見れば、非暴力による平和的な解決を求める声明などを発信すべきだと思うが如何か。
ぜひ宗派声明を発信すべきと考えるし、その時は、ミャンマーに対する強い影響力をもつ日本政府が事態を終結させるため、国際社会と共にミャンマー政府、あるいはミャンマー軍に対しても強い働きかけをするように求めることが重要かと思う。
一般質問
渡辺 学 議員(三条教区選出)
♦ 大谷専修学院の会計をはじめ、3会計が特別会計から一般会計への統合が提案されました。「本来の特別会計設置の理念とは相反する」との説明ですが、「理念とは相反する」具合的内容と、一般会計化することの意味を改めてお聞かせください。
特に大谷専修学院は、人の育成と教師養成を担う大変重要な教育機関です。縮小する財政、また入学者数
が定員に満たない課題を抱える中、学院も効率化や経費・人員削減の対象になるのでしょうか。教育機関は教
団のいのちです。適切な教育環境、職員配置は担保されるのでしょうか。ご所見をお聞かせください。
♦ 次に現如上人の足跡をとおし、近代史の検証についてお尋ねいたします。
宗会は戦後50年の1995年に全世界に向け「不戦決議」を、20年後の2015年には重ねて「非戦決議2015年」を採択し、宗門の犯した罪の懴悔と罪責の検証を表明しました。
教団と国家の関係は幕末明治期以降大きく変化しました。
2022年は現如上人百回忌をお迎えします。上人の生きられた時代は、幕末から明治の激動する時代。天皇制をたてる明治新政府、廃仏毀釈の中、資金のない明治新政府の北門警備を担った、東本願寺の北海道開拓事業参画は、現如上人の足跡で最も注目されます。
開拓事業は明治政府の要請をうけて願い出る形で、東本願寺は「移民奨励・新道切開・教化普及」をスローガンに積極的に事業に協力しました。宗門存続の危機を国策に協力することで乗り越えてきたともいえましょう。寒冷地での開拓のご苦労は如何ほどだったのでしょう。
しかし、この北海道開拓事業は、先住アイヌ民族への迫害搾取を引き起こすことになりました。
国策に協調する教団の在り方は、ハンセン病(隔離)、戦争加担、仏法の名の下で断絶、差別、惨禍をもたらしてきました。
長年課題にしてきた「見真」諡号額の問題もあります。
「亡き人を偲びつつ如来のみ教えにあいたてまつる」とは昭和法要式の表白文です。
「亡き人を偲ぶ」現如上人、そして現如上人が生きた時代を検証することが法要をお勤めする大きな意義であると思います。ご所見をお聞かせください。
本山所蔵の資料もたくさんあると思いますので、本山としての検証作業と、パネル展等での公開を切望しますが、お考えをお聞かせください。
♦ 行財政改革案についてお尋ねいたします。
「持続可能な基盤整備」の手立てとして行財政改革案が示されました。
言うまでなく大谷派教団は仏教教団です。その教団運営は仏教精神に依らなければならないと思いますが、当局は如何お考えですか。
この度の改革案も仏教精神による改革と思うのですが、私にはよくわかりません。この度の改革案の中で仏教精神は表現されているのでしょうか。お聞かせください。
そして「新たな宗派財源の確保」として保管資金の「運用」を考えておられますが、仏教教団の資産管理として、金融マーケットでの「運用」は如何なものでしょうか。仏教教団は懇志、布施で成り立っています。仏法、教団に対する尊敬・敬意、言葉を換えれば供養で成り立っています。
懇志を大切に使うとは、運用ではなく教法の宣布です。教法の宣布のために懇志を運用し財源としたいというのは、全くの詭弁としか言いようがありません。金融マーケットでの運用を見込んで懇志や経常費のご依頼をするのですか。仏法に懇念を運ぶ全ての人への背信となるでしょう。
運用ではなく供養を受ける教団になるよう、言い方をかえれば、教団の活動に投資されるような教団が、教団たる所以ではないでしょうか。
ともかく拙速な改革に走るのではなく、広く論議を公開し、仏教精神にかなう行財政改革を切望して質問を終わります。
一般質問
宗議会議員 今居 哲治
①九州教区が発足してはや一年、九州教区の同朋は、新型コロナウイルス感染症拡大も相まって、様々な困難に直面しています。
改編前の旧教区の夫々で、拠出していた宗費、教区費、組費は、それぞれの教区の歴史的経緯の中で形作られてきました。
特に教区費や組費は、金額の多寡、拠出方法等々が様々です。教区改編以前に、それらの問題のすり合わせが全くされていませんでした。
不均等な旧五教区の拠出金を平均化し、活発な教化事業を実現していくために、今後の教区割当、教区費、組費をどうするか。その手法をめぐって苦悩は深まっています。教区改編後3年間の経過措置による財政補助は打ち切られ、教務支所に配置される所員は教区雇員となる方針です。この度の宗会(常会)に提起された「宗務改革(行財政改革)内局案」によれば、「教区への交付金(教化・奨励)17%⇨抜本的な見直し」の方針から考えれば、教区の負担が増大し、教区費、組費の大幅な増額拠出が予想されます。
「教区への交付金(教化・奨励)17%」の削減・廃止が行われるとすれば、当然のことながら御依頼(宗費)はその「17%」を除いた額(もしそれまで、1億円の御依頼額だったとすれば、17%を減じた8,300万円の新しい御依頼額となるのでしょうか。)をご依頼されるのでしょうか。これまで宗務当局は「教区改編は教区の負担の軽減にもなる」と言い続けられてきましたが、如何なる負担軽減策を考えておられるのかお示しください。
また、「組を中心とした教化活動の展開」が提起され取り組みが進められていますが、組によっては兼業寺院が多数で住職・坊守が高齢者等の寺院構成であるため、組が単独で教化活動を展開しづらく停滞している実態が散見される。
教区改編前は、教化活動の脆弱な組をつつみ込み、所属する組の教化活動が無い組の人でも、(旧)教区教化活動の事業に参加する中で「人と出会い」「人の誕生」を実現してきた。新教区での教区教化活動は、経費・広域過ぎるとの事で極めて限定的、また、恒常的なエリア(旧教区)での教化事業は廃止され、もしエリアでの教化活動を行うならばその都度、実行委員会を結成し、自分たちで経費、会計、開催のための準備、運営等々を担うこととされています。「自立・自律」方針によれば「活動するなら負担せよ」との事で、教化活動の衰退、停止が危惧される。解決の方途を示してほしい。
②九州に別院が三別院ありますが、鹿児島・佐世保別院は、直参門徒が多数おられ懇念をもって支えておられます。また、鹿児島組、長崎組の教化活動の拠点として有効に機能しています。大分県宇佐市の四日市別院は直参門徒は極めて少なく、旧日豊教区全体で支えてきました。新九州教区になり、「エリア教化事業を廃止し、組を中心とした教化活動を中心に」という方針により、四日市別院と日豊エリア全体の一体感が失われた為に、今後の崇敬体制に深刻な不安定性を与えています。2015年旧日豊教区は、厳しい論議を行い、百年後二百年後の別院相続を願い、御門徒からの多大なる浄財・御懇念を戴き、本堂・太鼓堂・客殿など伽藍・境内の修復・整備を行いました。その舌の根も乾かぬうちに、今、別院護持の危機を語らねばならないこの背
信行為とも言える事態は、宗務当局の強引な教区改編の方針によって引き起こされたのです。四日市別院の今後をどの様に展望していますか。
「以下の質問は、時間(5分間)切れのため質問できませんでした。」
③教区改編による教務所員削減を理由に、投票所を削減されました。これは、投票権・宗政参加権の大きな侵害です。早急な改善策を手当てして頂きたい。
また、教区改編後、議員定数削減が予定されていますが、宗政参加を保証し、教団への帰属意識を醸成する為
に、九州教区の実態に即した選挙制度を実現して頂きたい。
今回の宗会で宗議会、参議会ともに全会一致で「是旃陀羅の決議」を採択しました。この問題は1922(大正11)年の全国水平社創立以来、差別を助長してきたと指摘されていた。2013(平成25)年には、部落解放同盟広島県連合会から改めて問題提起をされた。宗門もようやくこの問題に真摯に取り組む機運が生れ、決議案採択に至ったものである。
「是旃陀羅」問題にする決議
私たちは、近年、部落解放を願う人々から、教団の根幹である教学・教化・儀式に直結する厳しい提起を受けてきました。『仏説観無量寿経』序分にある「是旃陀羅」という言葉にかかわる問題です。
このインドにおけるアウトカーストの人々を表す「旃陀羅」という言葉は、人間の尊厳を否定する根源的な差別語として機能してきました。
私たちは、その言葉を聞くことで心が痛い、耐え難いと感じる人がいることに思いが至らず、法要儀式で読誦を繰り返し、またその言葉に「穢多」・「非人」という言葉を当てて教化してきた歴史がありました。私たちは、あらためて差別される痛みや苦しみを感じてこられたすべての人々に対し、深く謝罪いたします。
また、私たちは、全国水平社創立以来、「親鸞に帰れ」という願いのもとに発せられる悲痛な叫びに、真に向き合うことができませんでした。
信心の問題と差別によって人間が否定されるという問題を切り離してしまうなど、教学・教化・儀式の課題として受け止めきれなかったと言わねばなりません。それは、カーストの克服を大きな課題とした釈尊の教えや、「みな、いし・かわら・つぶてのごとくなるわれらなり」と吐露した宗祖親鸞聖人の教えに違うものであり、念仏の僧伽を求める同朋会運動の精神に対して、 自ら背を向けるものであったと深く慚愧いたします。
私たちが、是旃陀羅の問題をはじめ、聖教における女性差別、また障がい差別等、すべての差別問題における課題を共有することは、同時に、教えを通して我が身の差別性が自覚させられていくことであります。
全国水平社創立百年、立教開宗八百年を目前にした今、私たちは、差別を受けてきた人々に二度と同じ苦しみを与えることがないよう、また、差別をし、 見過ごし気づけなかった過ちを繰り返すことのないように、あらためて、「人間解放」という人類共通の願いに向けた具体的な一歩を踏み出すべきであると考えます。
私たちは、宗憲前文の「同朋社会の顕現」という使命を果たすために、国家・宗教・民族・性別などのあらゆる差異を超えて差別のない社会を求め、継続的な努力と歩みを重ねていくことをここに誓います。
以上、決議いたします。
2021年6月28日 真宗大谷派 宗議会議員一同
2021年6月30日 真宗大谷派 参議会議員一同
編集後記
例年になく早く梅雨入りした今年。ようやく明けが宣言されたが、被災地ではいまだに避難者、不明者の捜索等々悲惨な現状が伝えられている。
本号がみな様のお手元に届くころには、オリンピックが開催されていると思いますが、関係者は異口同音に「安心、安全な大会に! 」と声を挙げているが、「安心」とは文字通り「心の平穏、やすらぎ」であり、「安全」とは「心配な状況がない」ということだと思う。では「安全な状態」は誰が宣言するのだろうか。端的に言えば、多くの場合、その道の研究者、専門家がその任を担う。
台風であれば、気圧配置や風の動向を見極めて科学的な根拠のもとに「もう安全です」の宣言が国民に届く。では、今回のオリンピックはどうだろうか。感染症の専門家も実際に大学や医療機関で研究しているその道の権威者の多くが「このままではさらに感染が広まる。」「人流が一気に進み、爆発的な感染は免れない」と言っているにもかかわらず、決行されている。「開催しなければならない背後事情があるのか !」と疑いたくなるのは筆者だけだろうか・・・。
向暑も砌、益々のご自愛を念じています。
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